
志手一哉教授による講演風景。(撮影:筆者)
「中小規模事務所におけるBIMの活用」をテーマに賛助会主催特別講演会
今回のテーマに対してBIMの第一人者であり、実務者への温かい視点で知られる芝浦工業大学の志手一哉教授にご登壇いただけることになったのは、まさに願ってもないことだった。志手先生は、国交省の「建築BIM環境整備部会」の部会長も務められる、まさに日本のBIM推進の司令塔ともいえる方だ。しかしその語り口は非常に気さくで建築が専門でない人にも分かりやすく理解できる。中小規模設計事務所がいかに「自分たちの武器」としてBIMを使いこなすかという、地に足の着いた視点でご講演していただくことになった。
講演会は本部会議室でのリアル参加とオンラインのハイブリッド形式で開催。賛助会の大根田達也代表の開会宣言とともに、特別記念講演会が始まった。
講師紹介|理論と実務の架け橋として
まずは志手先生の歩みが紹介された。1992年に竹中工務店に入社され、建築施工管理の最前線を経験。その後、生産設計・研究開発部門の配属を経て、現在は芝浦工業大学教授として、BIMを通じた建設産業の生産性向上について研究されている。志手先生の提唱するBIMは、単なる「カッコいい3D」ではない。施工現場の泥臭い苦労を知る先生だからこそ、設計・施工・維持管理まで、情報がいかに「正しく、楽に」つながるかを説き続けておられる。
「図面」から「情報生産」へ
講演の冒頭、志手先生はBIMの本質を「情報生産(Information Production)」だと定義した。これまでのCADは「線を引く」作業だったが、BIMは「情報を組み立てる」作業。特に、2024年度から公共工事でBIMが原則適用され、さらに2026年春には「BIM図面審査」が始まろうとしている今、これはもはや「未来の話」ではなく「明日の仕事」なのだという現実に、会場には緊張感が走った。
「下町BIM」のススメ
ここで、本講演のハイライトとも言える「下町BIM」の概念が紹介された。大規模プロジェクトのための「Big BIM」に対し、中小設計事務所が目指すべきは、少人数チームで多能工化し、ヒューマンエラーを物理的に排除する「下町BIM」である。「まずは、2D加筆ゼロを目指しましょう」という先生の呼びかけは強烈だった。モデルから切り出した図面に2D CADで手を加えない。不整合をゼロにする。この「フロントローディング」こそが、現場での質疑を減らし、結果として設計者の手戻りに怯えない環境を作るのだと。
聴講者からの感想
講演後の質疑応答も活発に行われ、多くの参加者から前向きな感想が寄せられた。・BIMはハードルが高いと思っていたが、『自分の仕事を楽にするための文房具』という言葉に救われた。
・2nd加筆ゼロの重要性が身に染みた。不整合をなくすことが、最大のコスト削減だと再認識した。
・点群BIMの事例を見て、改修案件が多い自社でも活用できるイメージが湧いた。
最後に私の感想。「BIMは魔法の杖ではない。しかし、使いこなせば設計者の自由度を飛躍的に高める最強の道具になる。」志手先生の情熱に触れ、この「下町BIM」という武器を持って、新しい建築の形を切り拓いていくべきだと確信した。 志手先生のさらなる研究や活動に興味がある方は、ぜひ「Shide lab.」(志手研究室のウェブサイト)を覗いてみてほしい。そこには、建設業界の未来を明るく照らすヒントが溢れている。

與那原 康太(よなはら・こうた)
東京都建築士事務所協会賛助会員会幹事、株式会社青山芸術営業部部長
沖縄県出身
沖縄県出身
カテゴリー:支部 / ブロック情報
タグ:賛助会

















































