社労士豆知識 第77回
外国人雇用の実務と留意点
加藤 千鶴子(加藤社会保険労務士事務所)
産業別外国人労働者数の推移(厚生労働省)

 少子高齢化の影響により、人手不足が深刻化しています。その解決策として外国人材の雇用を検討する事業所が増えています。本稿では外国人雇用の基本知識と実務上の注意点を、制度面と受入れ体制の両面から解説します。

外国人雇用の現状
 厚生労働省の調査によると、令和6(2024)年10月末時点で日本における外国人労働者数は2,302,587人、外国人を雇用する事業所数は342,087所にのぼり、いずれも前年より大幅に増加しています。
在留資格の基礎知識
 外国人を雇用する際は、その在留資格が就労可能であるかを確認する必要があります。
【技能実習制度】:開発途上国の若者が日本で技術を学ぶ制度で、3年から最長5年まで就労が可能です。
【特定技能(1号・2号)】:一定の技能と日本語力を有する外国人が対象。1号は最長5年、2号では家族帯同が認められ、在留期限の更新も可能です。
【技術・人文知識・国際業務】:設計、施工管理など専門性の高い職種を対象とした制度です。学歴や実務経験が求められます。
これらの制度は、目的・期間・就労内容に応じて使い分ける必要があります。
雇用時の留意点
 外国人材の受け入れは、単なる労働力確保ではなく、職場の一員として共に働くための環境整備が求められます。以下の点に留意しましょう。
【受け入れ方針の社内共有】 企業としての採用の目的や意義を明確にし、全社員が理解することが重要です。
【在留資格と更新管理】在留カードの確認や在留期限の管理を怠らず、不法就労を防ぎましょう。
【言語・文化への配慮】日本語能力に個人差があるため、簡潔な表現や翻訳ツールの活用が効果的です。
【生活支援と地域連携】住居の確保や生活ルールの説明に加え、地域社会との交流促進も定着率向上につながります。
【労働条件の明示】契約内容の翻訳や丁寧な説明を行い、日本人と同様の労働条件・福利厚生を適用することが求められます。
社会保険と届出の義務
 外国人労働者も原則として健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険の対象となります。雇用保険の加入要件を満たさなくても、雇入れ・離職の際は「外国人雇用状況届出」をハローワークへ提出することが義務付けられています。制度を正しく理解し、必要な手続きを忘れないようにしましょう。
助成金・支援制度の活用
 外国人材の受け入れや定着支援にあたっては、行政による助成制度の活用も有効です。特に厚生労働省の「外国人労働者就労環境整備助成金」では、外国人従業員の受け入れ体制構築に必要な経費(マニュアル作成、相談体制の整備、日本語指導など)に対して一定の補助が受けられます。地域によっては自治体独自の支援事業や研修制度が用意されていることもあり活用も重要です。
まとめ
 外国人材は現場において即戦力としてだけでなく、将来的に会社の成長を支える存在にもなり得ます。制度の正しい理解と適切な管理体制、そして文化的背景への配慮を通じて、安心して働ける職場づくりが実現できます。多様な人材が活躍できる現場を実現し、強い組織づくりを目指しましょう。
加藤 千鶴子(かとう・ちづこ)
大学卒業後、都市銀行にて融資業務・運用相談業務を担当。転職後は労働・社会保険・給与計算、その他就業規則・助成金申請の実務を経験し加藤社会保険労務士事務所を開業。
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士