今改めて聞いてみたい杭についての???──信頼のある杭基礎の構築に向けて
東京都建築士事務所協会会員委員会 第8回先端技術セミナー
安田 浩司(アーキテム・安田計画設計室、東京都建築士事務所協会編集専門委員、渋谷支部)
 東京都建築士事務所協会会員委員会主催の標題のセミナーが、平成28(2016)年3月9日に本部会議室にて開催された。さすが最近の関心事ということもあり、80人を超える参加者(構造系事務所の会員も多かった)で、会場は予備椅子を使うほどの超満員。
 塚本達二東京都建築士事務所協会会員委員会委員長と、児玉コンクリート株式会社の染谷栄一技術本部長の挨拶の後、同社技術部の吾妻正輝氏から、「既製コンクリート杭、鋼管杭、場所打ち杭」それぞれの特徴などについての説明。使用可能な地盤や、杭径、支持力や引き抜き力などの特性についての解説と共に、「杭基礎選定は条件が複合的に関係して有利、不利があるので、ぜひとも専門業者に相談を……」と、PRも忘れない。
 続いて同じく同社技術部の全田和之氏からは「施工条件(周辺環境)」、「地盤条件(土質等)」、「設計条件」についての説明があった。特に「地盤条件」は目に見えない地中のことなので、今回の「杭未達」のように注意が必要だ。
 神奈川県のマンション傾斜問題については、その問題点について、「施工体制(元請→工事監理→1〜3次下請)」、「情報公開」、「工法選定と支持層の特徴」、「元請の管理体制」を指摘。われわれ設計監理者も、元請任せにしてはいけないことを痛感した。
 最後に同社工事部の小池充氏による「今後の“既製杭施工管理”について」の説明。「施工体制」、「支持層到達」、「施工記録」についてである。特に、監理技術者には「支持層への到達」を確認する責任があり、告示で定められているとのこと。報告フォーマットの整備やチェックも大切だが、「設計監理者〜元請〜施工者」一貫の情報把握が必要なのだ。 
杭基礎の初歩から実務まで内容豊富で、一部には「数式」を使った説明まであったが、あっという間の90分であった。 
質疑応答の後、佐藤登賛助会員会会長の挨拶で閉会となり、そのまま竹松和利副会長の乾杯発声で「小宴」となった。質疑応答では聞けなかった個別案件など、あちらこちらで話し込んでいる。先端技術セミナーは、小宴(懇親会)も含め無料!なので、皆さんもぜひ参加して下さい。 
なお、『コア東京』では、5月号以降に児玉コンクリート(株)にご協力いただき、より詳細な内容を掲載する予定です。
上:満席のセミナー会場。右:セミナー後の小宴。
安田 浩司(やすだ・こうじ)
建築家、アーキテム・安田計画設計室、東京都建築士事務所協会編集専門委員、渋谷支部 1954 年生まれ/ 1978 年 東京デザイン専門学校卒業
タグ:会員委員会