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小林 正典(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・品川支部、株式会社相和技術研究所)
紅葉が見頃な季節が近づきました。紅葉見はストレス発散に効果的であり、時間をつくって見に行きたいと思っています。昨秋は、奈良の竜田川辺りを訪れました。まるで、日本の秋の女神とされる竜田姫が、木々の葉を赤や黄色で染め上げているような印象深い光景でした。諸外国でも紅葉を見ることができますが、やはり日本の紅葉が一番美しく、誇らし気分になってきます。
私の好きな国のひとつである米国に目を移すと、11月は4年に1度の大統領選挙です。本誌を発刊する頃には結果は分かっていると思いますが、初の女性大統領が誕生するのか関心を持って見ています。近年、フォーチュン500企業の女性CEO数も過去最大数となり、役員数は企業の株価の推移にプラスに相関しているといわれています。女性大統領が誕生すれば、スーパーウーマンにはならずにしても、世の女性活躍がさらに進むのでしょうか。
そのような観点で、私の職業を振り返えると、女性初の一級建築士となった浜口ミホを思い起こします。戦後、食に関する革命を起こした女性のひとりとしてドラマ化もされました。今では当たり前のダイニング・キッチン(DK)の生みの親です。建築は完全な男の職業領域とされていた時代に、女性・主婦の視点をもつ建築士が活躍し、住宅改善に尽力したからこそ誕生した住空間と思います。
男性脳・女性脳という問いは、永く続いている生物学的な問いですが、建築を考える際には、その違いは少なく、ジェンダーレスな世界と思っています。そのような中でも、女性にしかない視点や気づきはあり、バイアスに気づかされる時もあり、大切にしています。少なからずチームで仕事をし、バックアップもしながら、理想を求めて追いかける毎日です。
今年初め、特別講演で講師をしていただいた建築家・永山祐子さんのお話で、来年開催される大阪・関西万博のウーマンズ・パビリオンは、ドバイ万博日本館のファサードをリユースして、大阪につなげる試みをされているとのことでした。来年の干支の巳年は「復活と再生」を意味する年であり、リユース、再利用、持続可能な取り組みにおいても相応しい年と思います。
年末まで残りあと2カ月半奮闘し、来年につながる何かを実らせながら、今年も完走したいと思います。
小林 正典(こばやし・まさのり)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・品川支部、株式会社相和技術研究所)
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