千代田支部 建築見学会「学士会館」
千代田支部|令和6(2024)年10月1日(都民の日)@千代田区神田錦町
古⽥ 秀⾏(東京都建築士事務所協会千代⽥⽀部編集員、エノア総合計画事務所)
旧館外観夜景。
セセッションの特徴を表す南側玄関のアーチ。
201号室。アカンサスの葉の装飾を持つ持送り。
201号室。オーケストラ用のバルコニー。
201号室ロビー。
参加者記念撮影。
 「学士会館」の建築見学会を千代田支部で開催した。
 学士会より橋本賢一さんと薄井敦子さん、文化財保存計画協会より岡建司さんに同行いただき説明いただいた。
 学士会会員のための倶楽部施設である学士会館の歴史を振り返ると、東京大学発祥の地である千代田区神田錦町に昭和3(1928)年、震災復興事業として旧館が完成。設計は構造が佐野利器、意匠は高橋貞太郎だった。その後昭和12(1937)年に新館が三菱地所部の藤村朗の設計により完成した。当時では極めて珍しいとされた鉄骨鉄筋コンクリート造。杭は旧館・新館合わせて約1,300本の米松杭が打ち込まれた。
 学士会館は日本最古の大学系クラブ建築ともいわれているが、外観は20世紀初頭のウイーンで起こり最先端とされた「セセッション」、全体の形はモダンで装飾を部分的に協調するデザインとなっており、南玄関のアーチとその上部のキーストーンにその特徴がよく表れている。内部はロマネスクとゴシックをベースとした折衷的なインテリアとなっている。
 千代田支部でも昨年と今年の2度にわたり支部総会で利用させていただいた宴会場201号室は、建設当時の姿をよく残しているといわれており、アカンサスの葉の装飾を持つ「持ち送り」、また生演奏が行われていたオーケストラ用バルコニーが特徴的である。
 建物の老朽化に伴い再開発されることとなり、2025年より一時休館し、約5年の工期が予定される再開発工事が始まる。前面道路「白山通り」は都市計画道路となっているため、建替え時には道路拡幅部分(7m)をセットバックする必要がある。そのため今回事業予算の関係から新館部分は解体となり、旧館を保存するためその地上部分を曳家することとなる。
 昭和初期の旧館完成から今日に至るまで96年、神田錦町の歴史的建造物として親しまれた学士会館が再開発されるのは寂しくも感じるが、数年後に生まれ変わる学士会館において、再び千代田支部総会が開催できればと願っている。
古田 秀行(ふるた・ひでゆき)
株式会社エノア総合計画事務所取締役 計画設計第一部長、東京都建築士事務所協会千代田支部編集委員
1957年 東京生まれ/1979年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/株式会社間組建築設計部を経て、2003年 株式会社エノア総合計画事務所入社、現在に至る