第97回定時総会開催
令和6(2024)年6月17日@明治記念館
鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所)
井出 幸子(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・豊島支部副理事、UIFA JAPON(国際女性建築家会議)広報担当理事、(株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所)
佐賀井 尚(東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部、有限会社尚建築工房)
大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所)

 青々とした芝生に囲まれた明治記念館にて、Web視聴も併用した定時総会が開催された。事務局の永田知世子さんの司会により、昨年お亡くなりになられた会員3名の名前が読み上げられ黙祷をささげた。その後、2024(令和6)年3月31日時点での会員数1,603名に対し、過半数となる802名が定足数であることが伝えられ、正会員出席者99名、書面及び電子評決857名の計956名で定足数が満たされ本総会が成立する旨が説明された。永池雅人副会長により開会が宣言され、富樫亮副会長による「建築士事務所憲章」の朗読が行われ、千鳥義典会長の挨拶となった。

挨拶する千鳥義典会長。
千鳥義典会長挨拶(要約)
 昨年の総会での会長就任挨拶の中で、これまでの活動の優れたところは継承し、新しいことに挑戦し自己変革を遂げる未来志向の組織を目指す、つまり継承と革新の両立ということを申し上げた。そして、そのための合意のプロセスを大切にした会員融和と、円滑な組織運営を図ることを表明した。
 私なりにこの1年間、精一杯に協会の運営に携わってきたが、役員をはじめ支部長、また会員の皆様にはこの方針にご理解ご協力をいただいたことをこの場をお借りして御礼申し上げたい。建築士事務所を取り巻く環境として、デジタル化の加速やDXの推進、また、脱炭素社会に向けた省エネ再エネの取り組み、技術者技能者の不足など、直面する課題は引き続き私たちにとって大きなテーマである。これに加えて、今年の元日に発生した能登半島地震に見られるような、地震や自然災害への対策についても改めて言うまでもない大きな課題といえる。これらに正面から向き合い、建築やまちづくりを通して社会貢献を果たしていくことが私たちの使命であるとして引き続き尽力していく所存である。
 昨年度の理事会で承認された中期事業計画および実行計画は令和6年度からの事業計画予算に反映されている。私からは3つの重点目標について補足的に述べさせていただく。
 まず、第1の『訴求力のある魅力づくりと情報発信を通じたブランドイメージの向上』では、マネジメント支援センターによる提供サービスの充実に力を入れている。昨年度は、日事連サービスを通じた「業務災害補償保険」、「休業補償制度」、「福利厚生制度」が紹介されたが、今年度は「アーキ・パートナー」という名称の事務所紹介サービスの運用を開始する。また、アーカイブ事業やBIM活用などの業務のデジタル化の推進についても現在検討を進めている。今後もソーシャルメディアを含めたさまざまなメディアを活用した情報発信を行い会員の要望に応えていきたい。
 第2の『組織体制の強化と財務状況健全化に向けた取組の推進』だが、組織の基盤となる会員増強については、各支部の積極的な取り組みに感謝申し上げたい。会員へのサービスの充実と共に経済的側面を含めた入会メリットも重要と捉えており、各支部活動の支援となる施策を推進していきたい。財務状況については、ペーパーレス化やWeb活用など運営の効率化と経費削減を鋭意進めている。委員会活動についても見直しや合理化による15%の予算削減の中でも、これまでと変わらない活動を目指していただいている。引き続き、財務の健全化に向けて、より一層の効率化、合理化を図っていきたい。また、新たな事業として、大規模修繕相談室による大規模修繕設計・コンサルタント業務を開始する。既存マンションなどの適正な維持管理や再生は、国や東京都の大きな政策課題でもある。会員事務所が受託できるスキームを構築し運用を開始する。
 第3の『社会課題・政策動向を見据えた取組の促進』は、建築や環境の分野で志を同じくする諸団体との連携を深め、課題の解決や政策提言について共に考え実行していきたいと考える。また最近、行政関係機関との意見交換の場が増え、依頼される事項も増えてきている。この良好な関係を活かし、政策課題の問題点を抽出し提言へと繋げていきたいと考えている。このような活動を通して、当協会ならびに会員の皆様の社会的地位の向上を図ってまいりたいと考えている。このように、中期事業計画はその実現に向けて具体的な施策を鋭意進めているところだが、会員の皆様には、当会の事業活動について引き続きご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げたい。
 会長の挨拶に続き、議案の審議へと移った。
定時総会風景。議案の審議の様子。
議案の審議
 専務理事一任の声を受け選出された議長団が登壇した。議長団の自己紹介の後、議長一任の声を受けて議事録署名人2名が選任され審議が始まった。
 小松達也専務理事から第1号議案「令和5年度事業報告の承認」に関する議案書の説明が行われた。
 続いて、第2号議案「令和5年度収支決算の承認」について事務局経理担当の河元幸男氏による議案書の説明が行われた。監査報告は宇佐美貴士監事が代表し、すべての書類は法令ならびに定款に準拠し作成され、収支状況や財産状態を正しく示していること、理事の業務執行は法令ならびに定款に違反することなく行われたことを認めたと伝え質疑へと移った。
 事前にオンラインおよび書面にて寄せられた意見・質問書が読み上げられ、事務局からの回答が行われた。その後、会場出席会員からの一般質問を受けた。
 役員選出方法が定款による選出規定に相違している旨の意見が出され、機構改革WGの主査である永池雅人副会長が回答した。現状の選出方法が定款に抵触していないこと、過去からの経緯の中でより透明性を求めたこの方法の運用に至ったことの説明がされた。しかしながら引き続き機構改革WGでの検討の申し送りがされることが述べられ、第1号議案と第2号議案は承認された。続いて小松達也専務理事から「令和6年度事業計画」と「令和6年度収支予算」が報告され議事は終了し議長団は退席した。
在籍30年会員表彰を代表して挨拶する一級建築士事務所(株)オームラ建築設計の大村吉美さん。
会員増強目標を達成した7支部の表彰。
表彰
 当協会に30年以上在籍し、本会の発展に寄与された会員21事務所が紹介され、代表して一級建築士事務所(株)オームラ建築設計の大村吉美氏(杉並支部)に表彰状が贈呈された。
 次に、会員増強優良支部が会員委員会委員長である神辺和幸理事から読み上げられた。表彰されたのは八王子支部、江戸川支部、港支部、文京支部、目黒支部、千代田支部、台東支部の7支部で、10社増強という最も貢献された八王子支部に代表して表彰状が贈呈された。
 最後に武内敏幸副会長が閉会の辞を述べ閉会となった。
マネジメント支援センター運営特別委員会委員長の宮尾宣央常任理事によるアーキ・パートナー紹介。
協力事務所マッチングサービス(アーキ・パートナー)紹介
 総会終了後に同会場において、千鳥会長の挨拶にも述べられた今年度から運用が開始される「協力事務所マッチングサービス(アーキ・パートナー)」について、マネジメント支援センター運営特別委員会委員長の宮尾宣央常任理事による紹介がされ、すべてのプログラムは終了した。
(鈴木 文雄)
第50回東京建築賞の表彰。
第50回東京建築賞表彰式
 15:15より、第50回東京建築賞表彰式が、東京建築賞特別委員会の川瀬普也さんと事務局の横川真穂さんの司会で始まった。司会より、今回、96作品の応募があったことが報告され、選考委員の紹介の後、各賞の紹介が行われた。
 古谷誠章東京建築賞選考委員会委員長から、1次審査を経て22作品に絞られ、原則1作品3名で現地審査を行い、現地審査を行った委員の報告に基づき評価が行われ、15作品が選ばれたとの報告があった。各東京建築賞について詳細な講評(『コア東京』2024年6月号参照)の後、各賞の表彰が行われた。
 表彰式の最後の挨拶で千鳥会長は、東京建築賞は50回目の節目を迎え、回を重ねる毎に作品のレベルがあがり、賞の社会的な評価が向上してきたことを感じ嬉しく思い、かつ協会としての責任の重さを感じること、各賞のこれからの育ち方への期待と、昨年、前会長が語った建築主・設計者・施工者三位一体の共同作業であるというコメントに続けて、計画的な維持管理をすることで、建物がいつまでも生き生きとその使命を果たし続けることの重要性を加えたい、と語って表彰式を締めくくった。
古谷誠章東京建築賞選考委員会委員長による特別講演。
第50回東京建築賞特別講演
 16:20からは50回記念として、古谷誠章東京建築賞選考委員会委員長より「これからの東京建築賞──人と文化を育む建築賞のあり方とは」というタイトルで特別講演が行われた。まず、なんのために建築賞があるのか、そして建築賞の育て方を考えたいと述べた。
 【なにを】:建築主・設計者・施工者三位一体の共同作業を顕彰すること。【なんのために】:これらの顕彰作業を通じて、次の世代に良い示唆を与え、その知見が活かされ、より良いものが生まれてくることが、人と文化を育んでいくこと。
 【審査形式のあり方(育て方)】:ある審査で、恩師、穂積信夫先生から宿題「応募者が当落にかかわらず参加意義を感じられる審査形式がとれないのか」をいただいた。そのお題に対し「応募者全員のポスターセッションを行い審査員と作品のやりとりを行う。その後、公開でやりとりを行い、現地審査への絞り込みを行ったらどうか」と申し上げた。また、2次審査も、現地審査に参加しなかった審査員へプレゼンテーションを公開で行うことで、仮に落選してもそのやりとりが設計者にとって次への意欲の糧となるはずと考えた。それ以降、できるだけ同様に近い形式で、Webも含め公開で審査ができる形式で進めてきている。
 今後、東京建築賞の選考委員としては、講評を丁寧に発信することに努めたい。設計者のみならず、多くの建築主や施工者と共有することで、建築の文化がより豊かになっていくのではないかと考えると語った。
(井出 幸子)
千鳥義典会長による懇親会開会の辞。
懇親会
 千鳥会長の開会の辞から懇親会が始められた。
 来年は昭和100年になります。東京は大きな災害に2度あっています。1度目は大正になるが関東大震災。2度目は東京大空襲です。戦後80年間は大きな災害は起きていません。この東京をより住みやすく、強靭な都市にし、次世代に繋げていくのがわれわれの使命であります。東京都には「未来の東京」戦略としておそらく1,000を超える施策があります。われわれの専門である建築、街づくりを通して、東京都に施策の提言をしていきたいと考えています。
来賓祝辞
小池百合子東京都知事
 皆様こんばんは、本日はリアル百合子でございます。千鳥会長からお話があった通り、耐震化、不燃化、東京の森の木を使った木使いの家を進めていかなければなりません。「未来の東京」戦略として医療から、福祉、教育、街づくりと多岐にわたり進めています。世の中の変化するスピードが速いため、最近はアジャイルという言葉が使われますが、政策を適宜変えていかなければ時代に間に合いません。東京は世界の最高の都市として、持続的な成長を続けるためにも常に見直しをしなければなりません。住めば健康になる、家にも燃費がある、そのような建物の提言を皆様にしていただき、持続的に発展をするこの東京がさらに磨きが掛けられると思っています。資材の高騰もあります、経済を牽引するのが建築の分野です。建築士の皆様のご健勝と、東京都建築士事務所協会がこれからも益々ご発展されることを祈念いたします。
菅野弘一東京都議会自由民主党幹事長・都議会自民党建築事務所政策研究会会長
 1月1日に起きた能登半島地震をきっかけにもう一度都市災害に対する都民の意識も高まっています。命を守る建築物、グレーゾーン住宅に対する提言をいただき施策を進めて参りました。木造建物基礎の重大性を能登半島地震で改めて認識しました。それと同時に環境負荷、ゼロエミッション建物への新しい技術、アイデアを提言いただきたい。東京が環境にも優しくて、安全で安心できる街にできればと思っています。
東村邦浩都議会公明党幹事長
 東京は災害に強い街をつくらなければならない、その一翼を皆様が担っています。東京強靭化プロジェクトとして今年も6,700億円の予算を付けました。特に東京は毎年線状降水帯による水害の危険にさらされています。東京都は環七の地下調整池を東京湾につなごうという壮大な計画を進めています。5年10年とかけて完成し、都民の命を守る大事業です。この都政をもっともっと良くするために、施策を前に進めていかなければなりません。そのためにお力を貸していただきたいと思います。
たきぐち学都民ファーストの会東京都議団幹事長
 今年は元日に能登半島地震がありました。阪神淡路大震災では耐震化・不燃化の対策が進み、熊本地震の時には、グレーゾーン対策について事務所協会の提言をいただきました。省エネ・再エネマンション促進についてもご協力をいただいております。都民の安心と安全のためにこれからもご協力いただきたいと思います。
西沢けいた東京都議会立憲民主党幹事長
 都民の住環境に対する関心が高まっています。都民の住環境に配慮した皆様の建築事業に大変感謝しております。100年、50年、ひょっとしたら明日にでも何が起こるかわからない状況で、日々変わる法令改正に皆様方にご対応いただき感謝申し上げます。皆様の仕事のしやすい環境をつくるようにしてまいります。
丸川珠代参議院議員
 今年1月業務報酬基準の見直しをしました。骨太の方針でさまざまなものが盛り込まれました。建築BIM対象も中小まで広がってきています。若い良い人材を引き継いでいくためにDXを進めなければいけないと思っています。ぜひ国の支援を活用していただきまして、業界があらたな街づくりのニーズにしっかりと応えていけるような持続可能性を一緒につくっていきたいと思います。
乾杯
児玉耕二(一社)日本建築士事務所協会連合会会長
 日本建築士事務所協会連合会の課題は、会員増強です。東京都建築士事務所協会は昨年8事務所増え、1,605事務所になりました。東京会では100、200と建築事務所が減っている中では健闘していると思いますが、全国では石川県建築士事務所協会では昨年4.2%の会員増強をしました。東京会も各支部1事務所増やすことによって29事務所増えます。それは財務状況の改善にもつながります。ぜひとも皆様のご協力を期待したいと思います。
閉会
三栖邦博東京都建築士事務所協会名誉会員
 会員の数が登録建築士事務所数の3割に達していないとなかなか難しい。ひとりひとりが少しでも仲間を増やして、力を持って、私たちが業務を果たせるような基盤をつくり、われわれがより社会に対して貢献できるよう建築士としての基盤定義をつくっていくことが会員増強につながると思っています。精進していただければと思います。
(佐賀井 尚)
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社/現在、同代表取締役
井出 幸子(いで・さちこ)
東京都建築士事務所協会豊島支部 副理事、UIFA JAPON(国際女性建築家会議日本支部)広報担当理事、(株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所
1950年 東京都生まれ/1972年 日本女子大学住居学科卒//1972〜2012年 (株)アール・アイ・エー勤務、各種計画・意匠設計に従事/2012年 (株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所設立
佐賀井 尚(さかい・たかし)
東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部、有限会社尚建築工房
1956年 栃木県生まれ/1980年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、(株)ランド計画研究所勤務/1990年 尚建築工房設立/1998年 有限会社尚建築工房に改組
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする
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