当会は、(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会及び(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体ならびに東京都建築士事務所政経研究会と共同して、令和5(2023)年10月5日に国に対し要望書を提出すると共に、令和5(2023)年8月31日および令和5(2023)年9月6日に東京都に対し要望書を提出しました。
各要望理由は、『コア東京』2023年10月号および2023年11月号ならびに「コア東京web」に掲載しました。
令和6年度国家予算、税制改正等に関する要望の回答について
自由民主党東京都支部連合会会長|萩生田 光一 政調会長|平 将明
要望1:
設計等を委託する建築主の利益保護を図る建築士法(以下「法」という)の趣旨を全うするため、建築設計を管理する責任を持つ管理建築士に対し5年に1度の定期的な講習の受講義務を課すよう要望いたします。併せて、かかる講習を受講した管理建築士の下で業務を行うことにより建築士事務所全体としては十分な業務水準を確保することができることから、建築士の定期講習の受講間隔を3年から5年に延長いただきますよう要望いたします。
回答:
○建築士法第22条の2に基づく定期講習は、国民の生命、財産の保護の観点から、建築士の資格取得後の新たな建築技術への対応や建築基準法令等の改正への対応等必要な能力の維持向上を図るものです。○この講習は、建築士事務所に所属する全ての建築士を対象としており、管理建築士もその対象となります。
〇なお、ご要望の管理建築士に限った講習を新設し、代わりに建築士の定期講習の受講間隔を3年から5年とすることについては、あくまで建築物の設計は個々の建築士の責任のもとで行われることを踏まえると、慎重な検討が必要なものと考えております。
【担当国会議員(小田原潔衆院議員)からのコメント】
建築士法に基づく定期講習は、国民の皆様が安心・安全に建築物を利用できるよう、また新たな建築技術の向上の為にも必要である制度と承知しております。建築士の皆様にもご理解いただけるような制度を引き続き検討してまいります。
要望2:
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ再エネ設計業務を行うにあたっての適正な業務量を算定し業務報酬基準を整備すると共に、業務量に応じた適正な業務期間、設計人・時間を加算して頂きますよう要望いたします。併せて、省エネ再エネに関する基準の変更に応じて適時に業務報酬基準を改正頂きますよう要望いたします。
回答:
○建築士法第25条に基づく「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(令和6年国土交通省告示第8号)」は、建築設計等の業務報酬の合理的かつ適正な算定に資するよう、業務報酬の算定方法や業務量の目安を示すものです。○2025年4月に省エネ基準への適合の全面義務化が予定されていることも踏まえ、近年の業務実態を適切に反映するため、設計団体の協力のもと見直しの検討を進め、令和6年1月9日に基準の改正を行ったところです。
○今後とも引き続き、業務実態の変化を踏まえつつ、必要な対応を進めて参ります。
【担当国会議員(小田原潔衆院議員)からのコメント】
近年の業務実態の変化を踏まえつつ、建築士の皆様のご意見もうかがいながら、適切な制度設計となるよう引き続き必要な検討を進めてまいります。
要望3(1):
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、既存マンションの省エネ改修・再エネ導入を促進するため、長期修繕計画作成ガイドラインに省エネ・再エネの項目を追加頂くと共に、(中略)要望いたします。
回答:
○平成20(2008)年6月に策定された長期修繕計画標準様式において想定される工事項目として、省エネルギー工事を記載しております。○また、令和3(2021)年9月の長期修繕計画作成ガイドライン・同コメントの改訂において、社会的な要請を踏まえ、マンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性等を追記しております。
【担当国会議員(小田原潔衆院議員)からのコメント】
既存マンションの大規模修繕等は多くの場合において長期修繕計画作成ガイドラインに基づいて行われている現状を考慮すると、今後必要となる省エネ・再エネに関する項目は引き続き不断の見直しを行っていくことが重要であると考えます。
要望3(2):
省エネ・再エネ項目を含む長期修繕計画の作成に対する補助制度を充実頂きますよう要望いたします。
回答:
○国土交通省では、地方自治体がマンションの管理組合へマンション管理士等を派遣し、長期修繕計画作成をサポートする取組に対して、マンション管理適正化・再生推進事業により支援しており、令和6(2024)年度も必要な予算を確保してまいります。
【担当国会議員(小田原潔衆院議員)からのコメント】
マンション管理適正化・再生推進事業の周知徹底をしていくことが重要であると考えます。建築士の皆様のご意見も伺いながら適切な制度となるよう、引き続き取り組んでまいります。
令和6年度東京都予算に対する要望について
東京都議会自由民主党幹事長|菅野 弘一 政調会長|川松 真一朗
要望1:
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、既存マンションの省エネ改修・再エネ導入を促進するため、省エネ・再エネ項目を含む長期修繕計画の作成に対する補助制度を充実頂きますよう要望いたします。
回答:
2050年「ゼロエミッション東京」の実現に向け、省エネ性能に優れ、太陽光発電設備を設置した環境性能の高い住宅の普及を促進するよう、新築マンションへの規制・誘導に加え、大きな割合を占める既存マンションストックの環境性能の向上を図ることが重要です。都では、令和5年度から「東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業」として、既存マンションの管理組合や所有者が、省エネ・再エネに向けて、補助金を活用した初期費用や節約できる電気料金等の検討を、建築士等の専門家に委託する経費に補助しています。また、(公財)東京都防災・建築まちづくりセンターが、管理組合に向けて実施している「省エネ再エネアドバイザー制度」、「マンション管理アドバイザー制度」による省エネ再エネや長期修繕計画見直し等へのアドバイスに補助しています。こうした取組により、建築士等の専門家と連携しながら、既存マンションの環境性能の向上を促進していきます。
令和6年度予算額
東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業 | 32,300千円 |
マンション省エネ・再エネアドバイザーの派遣費用助成 | |
18,300千円 | |
マンション管理アドバイザーの派遣費用助成 | 9,716千円 |
(住宅政策本部) |
要望2:
売主・買主が安心して中古住宅を取引することができる市場環境の整備並びに既存住宅流通市場の活性化に向け、より一層の既存住宅状況調査制度の周知をお願いすると共に、既存住宅状況調査の費用を補填するための補助金制度の創設を要望いたします。
回答:
消費者が既存住宅を安心して選択できるようにする上で、住宅が新築時から中古流通時までの全体を通じてその品質及び性能が確保され、その価値が適切に評価されるような市場の形成が必要です。都は、これまでも消費者向けに既存住宅の売買にあたって参考となるポイントをまとめた「東京既存住宅ガイドブック」や「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック(戸建住宅編)」などにより建物状況調査等の利用促進に向けた普及啓発を行ってきました。
これらに加え、今年度からは、民間事業者等が行う建物状況調査や既存住宅売買瑕疵保険、住宅履歴情報の三つの仕組みに関する普及啓発の取組を支援する事業を実施しています。
なお、買取再販事業者等が建物状況調査や省エネ改修の効果を消費者に明らかにして、適正な評価の下で販売する取組を支援する事業も合わせて実施しており、当該事業では建物状況調査の費用も補助対象としています。
令和6年度予算額 71,043千円 | (住宅政策本部) |
要望3:
建築士事務所登録等事務において、財政的負担が増大しているとともに、申請・届出の受付のオンライン化による事務量の増大や受付システムのコスト負担等の必要経費も増加するため、登録事務を安定的に運営・維持できるよう、適正な手数料に改定していただくようお願いいたします。併せて、一級、二級・木造建築士事務所の各登録申請において事務作業量の差異がないこと、申請者間の不均衡の是正の観点から手数料の同額化を要望いたします。
回答:
建築士事務所登録のオンライン化については、現在国土交通省がシステム構築を進めており、都道府県が負担するシステム利用の費用負担額についても検討しているところです。建築士事務所の登録手数料については、この費用負担額の決定を踏まえ、令和6年度までに改定する予定です。また、一級、二級・木造建築士事務所の各登録手数料については、同様の事務を行っている他道府県の動向も踏まえながら、検討していきます。
(都市整備局)
要望4:
現在、都内にはリノベーション等が見込まれている築年数が経過した建築物が数多く存在しています。既存建築物の一部を用途変更する場合、東京都建築安全条例に基づく防火・避難規定等が建物全体に遡及適用され、改修に係る合意形成や過度な費用負担等により計画を断念せざるを得ないケースも見受けられます。
既存建築ストックを有効活用していくため、安全性の確保に配慮しつつ、東京都建築安全条例における規制の合理化を図っていただくよう要望いたします。
回答:
建築基準法の改正に対応するとともに、既存建築物の用途変更等を円滑にできるようにするため、令和5年3月から有識者等による検討委員会を開催し、東京都建築安全条例について必要な規制の合理化に向けた検討をしています。令和6年度も引き続き、検討委員会を開催し、検討を進めていきます。令和6年度予算額
東京都建築安全条例検討委員会運営 171千円
(都市整備局)
要望5:
改修設計業務において、現況調査が十分に行われないまま、設計業務の発注が行われるケースが見受けられます。この場合、設計業務を受注しても現況調査から行うこととなりますが、設計業務の業務報酬だけではこの追加業務に対する業務報酬として不十分です。
改修設計業務における現況調査の重要性に鑑み、設計業務とは独立して現況調査を発注する、または、現況調査と設計業務をセットで発注していただきますよう要望いたします。
回答:
改修設計業務の委託に当たっては、工事内容を定めて発注しています。設計に際しては、改修範囲など現場の実態を反映しなければならないため、現況調査は設計業務を行う上で必要な作業であり、委託仕様書に調査の実施を明記しています。
なお、石綿含有分析調査など特別に現況調査が必要なものについては、仕様書に明示し適切な費用を加算しています。
(財務局)
カテゴリー:東京都建築士事務所協会関連
タグ:予算要望