思い出のスケッチ #357
壊された風景
大島 健二(東京都建築士事務所協会台東支部、OCM一級建築士事務所)
 「いい思い出ばかりではない」とか「苦い思い出」というコトバがあるように、思い出とは決してすべてが「お花畑的」なわけではありません。またスケッチも同じく、お花畑だけではなく、災害や惨劇もまた、描かれる対象になりえます。
 特に建築設計を生業にするものにとって、建物が破壊されていく姿を見ることは、おそらく一般の人よりも辛いものであるに違いありません。あるいは日々建物を解体することにも慣れているので、逆に若干の不感症になっているところもあるかもしれず、建物が壊れていく様も、秋の落ち葉のごとく、自然の摂理であると達観しておかなければやっていけないような職業であるかもしれません。
 ことあるごとに、メディアの画面に映る災害の姿をスケッチしてきました。距離や時間の遠い、ヒロシマ、熊本、パリはすぐに向き合うことができましたが、このたび初めて、向き合うことを避けてきた1995年の阪神淡路大震災を描いてみました。2011年の東日本大震災は、まだ描くことができずにいます。
大島 健二(おおしま・けんじ)
東京都建築士事務所協会台東支部、OCM一級建築士事務所
1965年 神戸生まれ/1991年 神戸大学大学院建築学科修了 西洋近代建築史専攻/1991-94年 日建設計勤務 超高層ビル、官公庁、研究所など担当/1995年 独立/1997年~ バンタンデザイン研究所講師/2000年 OCM一級建築士事務所設立