国および東京都からの回答
東京都建築士事務所協会およびTARC(東京建築設計関連事務所協会協議会)の要望書に対して
 当会は、(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会および(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体と共同して、令和3年11月19日に国に対し要望書を提出すると共に、令和3年9月3日に東京都に対し要望書を提出しました。各要望理由は、『コア東京』2021年10月号および2022年1月号、並びに「コア東京Web」に掲載しました。
令和4年度国家予算、税制改正等に関する要望の回答について
自由民主党東京都支部連合会
会長|萩生田 光一 政調会長|平 将明 担当議員|高木 啓

要望1:設計等を委託する建築主の利益保護を図る建築士法(以下「法」という。)の趣旨を全うするため、建築設計を管理する責任を持つ管理建築士に対し、定期的な講習の受講義務を課すよう要望致します。
 また、法第27条の5は、設計等を委託する建築主の利益保護を図るため、苦情解決制度を定めております。同制度における調査に伴う文書提出要求等に対する応答義務の主体を、建築士事務所協会の会員に限定せずより広く建築士事務所の登録をしている開設者とするよう要望致します。

回答:【国土交通省】 ○建築士の資質・能力の向上や建築士事務所の業務の適正化を図っていく上で、団体による自律的な体制を確保し、建築士の業務を遂行していく上で発生する諸問題の解決を図ることは大変重要であると考えます。
○管理建築士の資質・能力の向上については、建築士として3年以上の設計等の業務に従事した後、法定講習の課程を終了することを要件とするとともに、管理建築士になった後も、建築士事務所に属する建築士として、定期的(3年ごと)な法定講習の受講義務を課すこととしています。これらの受講義務に加え、新たに定期的な講習の受講義務を課すことは、管理建築士に対して、負担が増加することになるため、慎重な判断が必要と考えています。
○法第27条の5の規定については、建築士事務所協会に対して強制的な調査権限を付与する規定であるため、関係団体との調整に基づき、非会員の建築士事務所まで強制的な調査が及ぶことがないように、対象を会員の建築士事務所のみとすることとしたものであります。
○なお、国土交通省及び都道府県においては、建築士事務所協会の役割等について共通認識を構築してきており、建築士事務所の登録時に指定建築士事務所登録機関を通じて協会の役割を周知等しているところです。
○こうした取り組みを通じて建築主の利益の保護等を進めて参る所存です。
【自由民主党の方針】 ご要望を真摯に受け止め、引き続き努力して参ります。
【高木けい代議士のコメント】 3年に及ぶ「新型コロナウイルス・パンデミック」は、世界同時多発といえる人類史上かつてない厄炎をもたらしました。貴い人の命と健康が失われ、社会的、経済的にも大打撃を受けました。ようやく感染のピークを過ぎ「蔓延防止等重点措置」も解除するに至りましたが、国民の暮らしや働き方は、コロナ禍における新しい生活様式へと一変しました。またカーボンニュートラルへの取組みも、一層の加速化が求められる時代になり、建築物の環境性能向上はその一つの大きなターゲットであろうと思います。
 皆様は、正に建築のプロフェッショナルです。建築設計業界にあっても、そういった新たな環境に即応して、充実した社会資本の形成を目指すならば、建築文化の一層の向上が図られ、国家・社会の進展に大きく貢献することになります。
 もともと建築設計は、年々多岐多様化し、技術の革新も目覚ましく、個性豊かな創意工夫によって今日があります。
 個々の建築士に対する定期的な講習受講の義務付けと、管理建築士の受講義務化、また苦情解決制度の拡大は、現状の建築士の業務と社会情勢をみながら、今後検討すべき課題と考えます。関係各方面と積極的に協議し、よりよい方向性を見い出していきたいと思います。

要望2:建築確認申請に係る建築基準法等の建築関連法規について、各建築主事、各指定確認検査機関の法解釈の一元化を図って頂くよう要望致します。

回答:【国土交通省】 ○建築基準法第94条の不服申立てに対して、特定行政庁が設置する建築審査会の裁決により、確認済証が取り消される事案が、年に数件程度、発生していることは承知しています。
○このような事態を防ぐためにも、法令に適合した適切な設計が行われることが重要と考えており、建築士に対して定期講習の受講を義務付けるなど、建築士の資質の維持・向上に努めております。
○審査側における法令の運用に関しては、全国の特定行政庁や指定確認検査機関で構成される日本建築行政会議において、統一的な解釈の整理や周知等の取組が恒常的に行われています。
○また、国としましても、特定行政庁等に対する技術的助言や各種ガイドラインの周知のほか、法改正時には講習会を全国各地で開催するなど、審査側、申請側双方への支援を積極的に行っています。
○引き続き建築士の資質の維持・向上を図るとともに、法令の的確な運用に向けて取り組んで参ります。
【自由民主党の方針】 ご要望を真摯に受け止め、引き続き努力して参ります。
【高木けい代議士のコメント】 確かに、建築確認申請に係わる「建築基準法等の解釈」について、各行政機関の建築主事及び各指定確認機関の法解釈が、実態としてまちまちで不合理だという声をきくことがあります。
 ケースバイケースもあろうと思いますが、やはり公正公平に扱えるよう、できるだけ統一された法解釈が取られるべきと考えます。

要望3:既存建築物の改修設計における設備設計に関し、現地調査、基本計画・基本設計及び実施設計等の各設計業務の料率算定基準を設定頂くと共に、改修設計業務の標準的な発注仕様書の策定をご検討頂きたく要望いたします。

回答:【国土交通省】 ○現在、「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成31年国土交通省告示第98号)」について、中央建築士審査会及び基準検討委員会※において改正を検討しているところです。
※ 建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成31年国土交通省告示第98号)検討委員会
○ご指摘の改修設計業務における設備設計に係る基準については、当該審査会および委員会において検討課題としていますが、標準的な業務の設定が難しいなど多くの課題が示されているところです。
○なお、発注内容等は個々の契約に基づいて決まるものであり、改修設計に限らず、国として標準的な発注仕様書を定めることは困難と考えています。
【自由民主党の方針】 ご要望を真摯に受け止め、引き続き努力して参ります。
【高木けい代議士のコメント】 新築の設計料率が設定されているのに、既存建築物の改修設計における設備設計について設計基準料率が設定されていないため、適切な料率を出すことに苦労していると聞いています。
 設計基準料率を設定されることによって、的確な算定が出来るのは論を待ちませんが、一方で改修の場合はもとの建築物に違いがあるため、特に標準的な発注仕様書を定めることには難しさがあることもご理解下さい。
 一方で改修に対する標準的な発注仕様のあり方(考え方)は、ある一定策定できるのではないかと考えます。いずれにしても、中央建築士審査会及び基準検討委員会において、検討されるよう要望したいと思います。
令和4年度東京都予算に対する要望について
東京都議会自由民主党
幹事長|小宮 あんり 政調会長|小松 大祐

要望1:木造住宅で、昭和56年6月から平成12年5月までの間に建てられた住宅の耐震性能を確保し、安全で安心できる都市生活の実現のために、東京都において木造住宅(「グレーゾーン住宅」)への耐震助成制度を創設するとともに、都内の各区市町村における現行耐震助成制度の拡充を強力に指導して頂くよう、要望いたします。

回答:熊本地震では、新耐震基準の木造建築物の中でも、平成12年以前の建築物の一部で倒壊等の被害があったことから、国は所有者自らが、構造上の弱点となる接合部の安全点検を行うことを推奨しています。
 これを踏まえ、都としても、平成12年以前に建築された新耐震基準の木造住宅では、所有者による安全点検を行うよう、促しています。
 都は、法に基づき国が定めた基本的な方針等に則して、旧耐震基準の木造住宅等を対象として補助を実施しています。
 新耐震基準の木造住宅等を対象とした助成を実施している区市の情報については、他の区市町村に情報共有を図ってまいります。
(都市整備局)

要望2:東京都内の区市町村における建築確認申請に係る建築基準法、東京都建築安全条例等の建築関連法規について、各建築主事、各指定確認検査機関で調整頂き、法解釈を一元化していただくよう要望致します。

回答:都では、特定行政庁や指定確認検査機関等で構成される東京都建築行政連絡会等の場を通じて、建築基準法や東京都建築安全条例等の関連法令の運用に関する情報共有・意見交換を実施しております。
 また、建築安全条例等関連法令が適切に運用されるよう、技術的助言や運用基準等の通知やホームページへの掲載、指定確認検査機関等への講習会を通じて、周知を図っております。
 今後とも、適切な運用に向けて取り組んでまいります。
(都市整備局)

要望3:新型コロナウイルスを含む感染症の流行期に大規模地震や水害等の災害が発生した場合、都内の避難者を収容するには区市町村所管の施設のみでは不十分であり、補完的に東京都所管の施設を避難所として使用することを想定する必要があることから、避難所として使用可能な東京都所管施設の収容人数を調査すること、及び、一般社団法人東京都建築士事務所協会(以下「東事協」という)への当該調査の一括業務委託を要望致します。

回答:新型コロナウイルス等の感染症対策の観点を踏まえ、各避難先における十分なスペースを確保するためには、より多くの避難先の確保が求められます。そこで都としては、都立施設の活用を図るとともに、宿泊団体との協定に基づき、ホテル・旅館のリストを区市町村に提供するなど、区市町村の避難先の確保の支援を行っています。
 なお、収用人数については、各区市町村がコロナ禍を踏まえた適切な収容人数を想定できるよう、避難スペースの具体的なレイアウト等を掲載したガイドラインを策定しており、都立施設についてもガイドラインに基づき、算定することとしています。
(総務局・福祉保健局)
令和4年度予算額 0千円

要望4:既存建築物の改修設計における設備設計に関し、現地調査、基本計画・基本設計及び実施設計等の各設計業務の料率算定基準を設定頂くと共に、改修設計業務の標準的な発注仕様書の策定をご検討頂きたく要望いたします。

回答:既存建築物の改修設計においては、実施設計に先立ち与条件の整理が必要なものは基本設計を行うとともに、詳細な現地調査が必要なものは具体的な調査方法を仕様書に明示し発注しています。
 また、令和3年度から、仕様書に当該業務の標準業務時間数を明示し、業務量の目安を把握できるよう改正しています。
 改修設計は、業務内容が多岐に渡り、案件ごとに異なる設計を行うため、仕様書に業務内容を詳細に記載するなど、引き続き対応を行っていきます。
(財務局)

要望5:設計業務委託におきまして、積算作業工程も十分に考慮された適正な設計工期設定を要望いたします。
 また、設計工程において想定外の遅延等が発生し、積算図渡し時期に遅延が生じた場合には、積算作業期間を圧迫しない適正な工期変更等の措置を講じていただけますよう要望いたします。
 
回答:設計業務委託に関しては、契約後、受注者が提出した業務工程表を確認し、積算作業工程も含め、工程を管理しています。
また、発注者による要件変更、新型コロナウイルス感染症の感染拡大など、想定外の事由により設計期間が確保できない場合には、工期変更を行っています。
 引き続き、積算期間も考慮した工程管理を行うほか、適切な工期設定・工期変更など対応を行っていきます。
(財務局)