社労士豆知識 第55回
最新法改正情報:育児・介護休業法(その2)──その他の改正点について
松本 亜希子(松本社会保険労務士事務所)
 改正 育児・介護休業法が、令和3(2021)年6月9日に公布されました。前回は、(1)(2)で新設された男性の出生時育児休業と従来の育児休業の分割取得についてお伝えしました。今回はその他の改正点についてお伝えします。
(3)雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化
①育児休業を取得しやすいよう、雇用環境を整備することが義務付けられます。育児休業についての研修の実施、相談窓口の設置等、複数の中からいずれかを選択します。
②妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、事業主から制度について個別に周知するとともに、これらの制度の取得意向を確認するための措置が義務付けられます。周知の方法は、面談での制度説明や書面による制度の情報提供等、複数の中からいずれかを選択することが省令において定められる予定です。なお、事業主が労働者に対し、育児休業の取得を控えさせるような形での意向確認を認めないことが、今後示される指針に盛り込まれる予定です。
(令和4年4月1日施行)
(4)有期雇用労働者にも利用しやすく要件を緩和
 現在、有期雇用労働者が育児・介護休業を取得するためには、①引き続き雇用された期間が1年以上あること、②子どもが1歳6カ月に達するまでの間に契約満了することが明らかでないこと、のふたつの要件があります。
 今回の改正では①が廃止されて、②の要件のみで取得できるようになります。
 ただし「引き続き雇用された期間が1年未満の者は、別途労使協定の締結により除外することが可能」とされており、労使協定を締結していれば、①の要件は実質的には変わらないことになります。(令和4年4月1日施行)
(5)育児休業取得状況の公表を義務化
 従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。公表の具体的な内容は、今後省令で定められますが、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」が予定されています。(令和5年4月1日施行)
(6)育児休業給付(雇用保険)に新制度を適用
①「出生時育児休業給付金」が新たに設けられます。
 今回新しく創設された出生時育児休業※期間中にも、雇用保険から給付金が受給できます。
(※ 産後8週間に最大28日間、男性が2回分割取得できる休業)
②改正後の育児休業に対しても、これまでの育児休業給付金の対象となります。
③給付率等はこれまでと同等に。
 現在の育児休業給付金は、休業開始から180日目までの場合、休業開始前の賃金を元に算出した日額の100分の67(181日目以降は100分の50)です。給付率についてはこれまでと同じく、そして180日間という期間の取り扱いについては、新給付金と従来の育児休業給付金の期間を通算することとなりました。
④出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースに対応するために、雇用保険に加入していた期間の計算方法について特例が設けられます。
【改正前】
 育児休業給付を受給するためには、育児休業開始日前2年間に1カ月ごとの就労日数が11日以上ある月が12カ月以上必要。→出産日によっては月に11日以上の就労日数要件を満たさず、受給できないことがあった。
【改正後】
 上記要件を満たさなくても、起算日を「育児休業開始日前」から「産前休業開始日前」に変更した算出方法で日数要件を満たせば、受給可能に。
 この特例については育児休業開始日が令和3(2021)年9月1日以降の方が対象です。
(①~③については令和4年10月1日施行予定)
どのような対応が必要か
 このように、育児休業に関する制度については多くの改正点があるため、まずは制度を正しく理解することが大切です。その上で改正点に沿った就業規則や育児・介護休業規程等の修正が必要となります。ご不明点、ご相談事があれば、社会保険労務士にお問い合わせください。
松本 亜希子(まつもと・あきこ)
社会保険労務士、松本社会保険労務士事務所代表
大学卒業後、旅行会社勤務(3年)、カリブ海でダイビングインストラクター(4年)、帰国後は建設業界を中心に総務の仕事に約10年携わった後、社労士資格を取得して開業/社労士として、男子2人の母として、毎日奮闘中
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士