思い出のスケッチ #338
ST. PATRICK'S CATHEDRAL
森川 浩弌郎(元YENDO ASSOCIATES INC.、米国コネチカット州在住)
 五番街はニューヨークに来た人びとが必ずを訪れる所ですが、特に四九丁目から五九丁目には、ティファニーやトランプタワーに代表される有名なオフィスビル、アパート、高級ブランド店、デパート等が集中しています。これらの建物の間に挟まれた五〇丁目と五一丁目の間に白い大理石で建てられたセントパトリックス大聖堂があります。アイルランドのカトリック教会で一八五八年に起工され一八七八年に完成しましたが、その後司教の住居、学校、西棟、東棟、レディチャペルが増築され、一九二七年から一九三一年の間に大オルガンが設置されると同時に内陣が拡張されました。二〇一三年からの改修工事で、長い間足場がかけられていましたが、現在、美しい白い大理石の姿が蘇っています。
 三月一七日はセントパトリックスデーで、五番街で盛大なパレードが行われます。この日はアイルランドにキリスト教を広めた聖パトリック司教の命日です。アイルランドの国花であるシャムロックと呼ばれる三葉のクローバーとその緑色がシンボルで、パレードに参加する人びとは、緑の帽子や緑の服装をして緑のビールを飲んでお祝いをします。最近は日本でもセントパトリックスデーのパレードを各地でやっているようですが、起源はアイルランドではなく、一七六二年にアイルランドの兵隊がニューヨークの街を行進したことに始まります。
 このセントパトリックスの真向かいはロックフェラーセンターのインターナショナルビルディングですが、その前庭にブロンズのアトラス像が石の基壇の上に立っています。アトラスはギリシャ神話に登場する地球をつくり天空を支える神で、肩にのった天球儀の南北軸はニューヨーク市から北極星の位置を示しているそうです。
 ビルの前庭からは、セントパトリックス大聖堂の全体がよく見えます。アトラス像と組み合わせるとこの場所の雰囲気がよくわかると思い、こんなスケッチにしてみました。
森川 浩弌郎(もりかわ・こういちろう)
1960年 大阪市立都島工業高等学校卒業/1960年 大阪で圓堂建築設計事務所に入所/1962年 圓堂建築設計事務所東京に移転にともない東京に移転/1966 - 1968年 圓堂建築設計事務所勤務中、中村順平先生に師事する/1991 - 1997年 YENDO ASSOCIATES INC.ニューヨーク事務所に勤務/現在、米国コネチカット州に在住